第9章 労働関係の展開に関する法規整
賠償予定
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない(労働基準法16条)。
労働者の債務不履行又は不法行為によって使用者に損害が発生した場合に、現実に発生した損害について賠償請求することは禁止されていない。また、民法上は、債務不履行について賠償額の予定や違約金の定めが認められている(民法420条)。
しかし、当事者間に力関係の格差がある労働契約関係においては、過大な賠償額の予定(違約金)がなされて労働者の足止めに利用される等の危険があることから、賠償予定の禁止規定が定められた。
今日では、修学費用返還制度等が問題となっている。使用者が費用を出して被用者に海外留学や技能習得をさせる場合に、修学(修得)後ただちに辞められては困るので、その足止めのために、修学の費用を使用者が被用者に貸与する形式をとり、ただ修学後一定期間勤続の場合はその返還を免除する契約を整えることがある。
このような契約は、裁判例上、本来本人が負担すべき自主的な修学(技能習得)について使用者が修学費用を貸与し、ただ修学後一定期間勤務すればその返還債務を免除する、という実質のものであれば、賠償予定禁止の違反ではないとされている。
これに対し、使用者が自企業における教育訓練や能力開発の一環として業務命令で修学や研修をさせ、修学(研修)後の労働者を自企業に確保するために一定期間の勤務を約束させるという実質のものであれば、違反となる。
【関連ワード】
- 均等待遇
- 中間搾取
- 人身拘束
- 前借金相殺
- 強制貯金
- 強制労働
- 私生活の自由
- 公民権行使
- セクシュアルハラスメント
- パワーハラスメント
- 男女同一賃金
- 男女雇用機会均等法
- 募集・採用の差別
- 配置の性別差別
- 昇進の性別差別
- 降格の性別差別
- 教育訓練の性別差別
- 福利厚生の性別差別
- 職種の性別差別
- 雇用形態の性別差別
- 退職の性別差別
- 定年の性別差別
- 解雇の性別差別
- 更新の性別差別
- 間接差別
- ポジティブアクション
- 婚姻、妊娠・出産等と不利益取扱い
- マタニティハラスメント
- 母性健康管理措置
- 女性活躍推進法
- 一般事業主行動計画
- えるぼしマーク
- 障害者の雇用差別
- 試用
- 正規雇用労働者と非正規雇用労働者
- 有期契約労働者
- 無期転換の効果
- クーリング
- 雇止めの制限
- パートタイム労働者
- 短時間労働者と均等待遇
- 転換の措置義務
- 業務処理請負
- 派遣社員
- 労働者派遣法
- 派遣可能期間
- 派遣先の講ずべき措置
- 直接雇用義務
- 派遣先と労働保護法規
- 派遣元事業主の講ずべき措置
- 派遣元事業主の均衡待遇
- 派遣元事業主の福祉の増進
- 派遣労働者への労働条件・就業条件等
の明示 - 賃金
- 通貨払の原則
- 直接払の原則
- 全額払の原則
- 賃金と相殺
- 賃金の放棄
- 一定期払の原則
- 休業手当
- 最低賃金制度
- 法定労働時間
- 休憩時間の原則
- 週休制の原則
- 休日振替
- 管理監督者
- 時間外労働
- 休日労働
- 36協定
- 時間外労働の限度
- 割増率
- 変形労働時間制
- フレックスタイム制
- みなし労働時間制
- 裁量労働制
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
- 年次有給休暇
- パートタイム労働者の年次有給休暇
- 時季指定権と時季変更権
- 時間単位取得制度
- 計画的付与制度
- 年休自由利用
- 未消化年休
- 労働安全衛生法
- 総括安全衛生管理者、安全管理者、
衛生管理者 - 安全委員会、衛生委員会
- 産業医
- 安全衛生教育
- 健康診断
- メンタルヘルス対策
- メンタルヘルスケア
- ストレスチェック制度
- 年少者
- 育児介護休業法と深夜業
- 産前産後
- 妊娠中
- 育児時間
- 生理日
- 育児介護休業法
- 育児休業
- 育児休業期間の延長
- 子の看護休暇
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 介護休業
- 介護休暇
- 育児休業ハラスメント
- 次世代育成支援対策推進法
- 労災保険制度
- 労災保険
- 精神障害の労災認定
- 公益通報者保護法
- 企業と教育訓練
- 昇進
- 配転と配転命令権
- 出向
- 転籍
- 休職
- 定年制
- 解雇
- 労働組合法
- 労働組合
- 不当労働行為
- 労働委員会
- 労働関係調整法
- 労働協約
- 個別労働紛争