第9章 労働関係の展開に関する法規整
パワーハラスメント
◯パワーハラスメント
職場における「パワーハラスメント(パワハラ)」は、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為である。
「職場内での優位性」には、「職務上の地位」(上司から部下)に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれるとされている。このため、先輩-後輩、同僚間、部下から上司に対して行われるいじめ、嫌がらせ等も含まれる。
また、「業務の適正な範囲」を超えて行われた行為に限られ、業務上の必要な指示や注意・指導が適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたらない。
○パワーハラスメントの類型
職場のパワーハラスメントの行為類型としては、次のものがあげられる。
① 暴行・傷害(身体的な攻撃)
② 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③ 隔離・仲間はずし・無視
④ 職務上明らかに不要なことや遂行不可能ことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤ 職務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じられることや仕事を与えないこと(過少な要求)
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
○パワーハラスメントの法的問題
違法なパワーハラスメントが認められる場合、加害者である上司や同僚の被害労働者は、被害労働者の身体・名誉感情、人格権などを侵害した不法行為責任(民法709条)を負う。
加害者が不法行為責任を負う場合、使用者も、使用者責任(民法715条)として不法行為責任を負うとされることが多い。
また、企業は、被害労働者に対する労働契約上の安全配慮義務違反の責任を負うとされることも多い。
○パワーハラスメント対策の取組み
厚生労働省は、パワハラ情報総合サイト「あかるい職場応援団」を運営するほか、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を公表して、企業がパワーハラスメント対策の基本的な枠組みを構築するにあたって参考となるツール・情報等を提供している。
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