第9章 労働関係の展開に関する法規整
均等待遇
使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない(労働基準法3条)。これを「均等待遇の原則」と呼ぶ。
「労働条件」とは、労働契約関係における労働者の待遇の一切をいい、たとえば災害補償、安全衛生、福利厚生などに関する諸条件も含む。
「差別的取扱い」とは、特定のまたは一定のグループの労働者を他の労働者と区別して異なる取扱いをすることをいう。
使用者が均等待遇原則に違反する差別的取扱いをすれば、罰則(労働基準法119条1項)によって刑罰を科されるほか、その取扱いが法律行為(たとえば解雇、配置転換、懲戒処分)であれば強行法規違反として無効とされる。
また、同原則違反の差別的取扱いは強行法規違反の不法行為として損害賠償責任を生ぜしめる。
※均等待遇と「同一労働同一賃金」の関係等については、第1課題【同一労働同一賃金】以下を参照
国籍による差別
均等待遇の原則により、労働者の国籍を理由とした労働条件についての差別的取扱いはしてはならないとされている。ここにいう「国籍」には「人種」も入るとされている。
裁判例としては、在日朝鮮人であることを応募書類においては秘して(氏名、本籍欄に虚偽記入)採用内定された者が、入寮手続の際に在日朝鮮人であることを告げるや内定を取り消された事件において、「国籍」を理由とする「差別的取扱」であると判断された。
信条による差別
「信条」とは、思想、信念、そのほか人の内心におけるものの考え方を意味し、宗教的信条、政治的信条、その他の諸々の思想を含む。
均等待遇原則は、思想・信条そのものを理由とする差別的取扱いを禁止するだけであって、特定の思想・信条に従って行う行動が企業の秩序や利益を侵害する場合に、その行動を理由に差別的取扱いをするのを禁止するものではない。
社会的身分による差別
「社会的身分」とは、生来的なものにせよ、後天的なもの(例えば、受刑者、破産者)にせよ、自己の意思によっては逃れることのできない社会的な分類を指すと解される。
憲法14条にいう「門地」がこれに含まれることには争いがない。
臨時工、パートタイム労働者などの従業員としての種別は、「社会的身分」に含まれない。
【関連ワード】
- 中間搾取
- 人身拘束
- 賠償予定
- 前借金相殺
- 強制貯金
- 強制労働
- 私生活の自由
- 公民権行使
- セクシュアルハラスメント
- パワーハラスメント
- 男女同一賃金
- 男女雇用機会均等法
- 募集・採用の差別
- 配置の性別差別
- 昇進の性別差別
- 降格の性別差別
- 教育訓練の性別差別
- 福利厚生の性別差別
- 職種の性別差別
- 雇用形態の性別差別
- 退職の性別差別
- 定年の性別差別
- 解雇の性別差別
- 更新の性別差別
- 間接差別
- ポジティブアクション
- 婚姻、妊娠・出産等と不利益取扱い
- マタニティハラスメント
- 母性健康管理措置
- 女性活躍推進法
- 一般事業主行動計画
- えるぼしマーク
- 障害者の雇用差別
- 試用
- 正規雇用労働者と非正規雇用労働者
- 有期契約労働者
- 無期転換の効果
- クーリング
- 雇止めの制限
- パートタイム労働者
- 短時間労働者と均等待遇
- 転換の措置義務
- 業務処理請負
- 派遣社員
- 労働者派遣法
- 派遣可能期間
- 派遣先の講ずべき措置
- 直接雇用義務
- 派遣先と労働保護法規
- 派遣元事業主の講ずべき措置
- 派遣元事業主の均衡待遇
- 派遣元事業主の福祉の増進
- 派遣労働者への労働条件・就業条件等
の明示 - 賃金
- 通貨払の原則
- 直接払の原則
- 全額払の原則
- 賃金と相殺
- 賃金の放棄
- 一定期払の原則
- 休業手当
- 最低賃金制度
- 法定労働時間
- 休憩時間の原則
- 週休制の原則
- 休日振替
- 管理監督者
- 時間外労働
- 休日労働
- 36協定
- 時間外労働の限度
- 割増率
- 変形労働時間制
- フレックスタイム制
- みなし労働時間制
- 裁量労働制
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
- 年次有給休暇
- パートタイム労働者の年次有給休暇
- 時季指定権と時季変更権
- 時間単位取得制度
- 計画的付与制度
- 年休自由利用
- 未消化年休
- 労働安全衛生法
- 総括安全衛生管理者、安全管理者、
衛生管理者 - 安全委員会、衛生委員会
- 産業医
- 安全衛生教育
- 健康診断
- メンタルヘルス対策
- メンタルヘルスケア
- ストレスチェック制度
- 年少者
- 育児介護休業法と深夜業
- 産前産後
- 妊娠中
- 育児時間
- 生理日
- 育児介護休業法
- 育児休業
- 育児休業期間の延長
- 子の看護休暇
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 介護休業
- 介護休暇
- 育児休業ハラスメント
- 次世代育成支援対策推進法
- 労災保険制度
- 労災保険
- 精神障害の労災認定
- 公益通報者保護法
- 企業と教育訓練
- 昇進
- 配転と配転命令権
- 出向
- 転籍
- 休職
- 定年制
- 解雇
- 労働組合法
- 労働組合
- 不当労働行為
- 労働委員会
- 労働関係調整法
- 労働協約
- 個別労働紛争