第5章 労働市場の一般的施策
雇用対策法
「雇用対策法」(昭和四十一年七月二十一日法律第百三十二号)は、憲法の勤労の権利に基づく国の労働市場政策の基本方針と全体像を明らかにする法律である。
職業指導・職業紹介(職業安定法)、職業能力の開発(職業能力開発促進法)、失業者・雇用中断者に対する保険給付と雇用の維持・促進のための助成事業(雇用保険法)、就職困難者の雇用促進(求職者支援法 等)などの労働市場の一般的施策と、女子・若者・高年齢者・障害者の雇用の促進(育児介護休業法、青少年雇用促進法、高年齢者雇用安定法、障碍者雇用促進法 等)、地域雇用対策(地域雇用開発促進法 等)などの労働市場の個別的施策とについて、基本となる体系と理念を明らかにしたうえ、それら労働市場政策に共通の事業主の責務を定めている。
雇用対策法の目的と基本理念
雇用対策法は、「少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資すること」を目的とする(同法1条1項)。
同法の運用にあたっては、「労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならず」また、職業能力の開発・向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない(同法1条2項)。
労働者は、その職業生活の設計が適切に行われ、その設計に即した能力の開発・向上、転職にあたっての円滑な再就職の促進その他の措置が効果的に実施されることにより、「職業生活の全期間を通じて、その職業の安定が図られるように配慮されるものとする」(同法3条)。