第8章 労働契約の成立に関する法規整
採用内定取消し
採用内定を始期付解約権留保付労働契約とみる考えでも、採用内定取消事由が生じた場合には当然に解約(内定取消)ができると解されているわけではない。
裁判例は、内定取消事由について、解雇権濫用法理(労働契約法16条)に準じて、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と限定している。
例えば、採用内定通知書ないし誓約書に「提出書類への虚偽記入」という取消事由が記載されている場合、その文言に該当すれば全て内定取消が認められるわけではなく、虚偽記入の内容・程度が重大なもので、それによって従業員としての不適格性あるいは不信義性が判明したことを要する、と解されている。