第7章 個別的労働関係法
就業規則
「就業規則」とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関することや、職場内の規律などについて定めた職場における規則集である。
就業規則に関するルール
就業規則に関しては、労働基準法及び労働契約法に、次のようなルールが定められている。
① 就業規則の作成・届出義務(労働基準法89条)
② 就業規則の記載事項(労働基準法89条)
③ 就業規則の作成・変更の際の労働者側の意見聴取(労働基準法90条)
④ 就業規則の内容は法令や労働協約に反してはならない(労働基準法92、労働契約法13条)
⑤ 就業規則の周知(労働基準法106条)
就業規則の作成・届出義務
労働基準法は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は」一定の事項について「就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と規定する(89条)。
「行政官庁」は、具体的には労働基準監督署長である。
◯常時10人以上
労働基準法89条における「常時10人以上…使用する」とは、常態として10人以上を使用しているという意味である。
繁忙期のみ10人以上使用するというのはこれに該当しないが、使用する労働者が一時的に10人未満になることがあっても通常は10人以上を使用していればこれに該当しうる。
そして、「10人以上」は、企業単位ではなく事業場単位で計算すると解されている。
① 労働者
「労働者」には、正社員、パート、契約社員などの雇用形態のいかんを問わず当該事業場で使用されている労働者が入る。
ただし、下請労働者、派遣労働者などの使用者を異にする労働者は入らず、また「労働者」に該当しない個人委託業者なども入らない。
② 労働者側の意見書添付
なお、届出に際しては、労働者側(事業場における過半数組合または労働者の過半数代表者)の意見を記した書面を添付しなければならない(労働基準法90条2項)。
就業規則の記載事項
就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)がある(労働基準法89条)。
・絶対的記載事項
① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
・相対的記載事項
① 退職手当に関する事項
② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③ 食費、作業用品などの負担に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰、制裁に関する事項
⑧ その他全労働者に適用される事項
就業規則の作成・変更の際の労働者側の意見聴取
就業規則は、労働者と使用者の双方が守るべきものであるから、その内容を労働者がまったく知らないといったことがないように、就業規則の作成・変更の際は、事業場における過半数組合または労働者の過半数代表者の意見を聴くことが義務づけられている(労働基準法90条1項)。
そして、常時10人以上の労働者を使用している事業場の使用者が就業規則の作成・変更を労働基準監督署長に届出する際には、労働者側(事業場における過半数組合または労働者の過半数代表者)の意見を記した書面を添付しなければならない(労働基準法90条2項)。
就業規則の周知
◯周知の義務
就業規則は、各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければならない(労働基準法第106条)。
◯周知の方法
「周知」は、事業場の従業員の大多数が就業規則の内容を現実に知っているか、知りうる状態にあれば足りると解されており、周知の方法としては、次のものが考えられる。
① 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
② 書面で労働者に交付する
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する